日常のコミュニケーションや交渉はしばしば難しいもの。
どうすれば相手を理解し、ポジティブな結果へと導くことができるのでしょうか?
デール・カーネギーの『人を動かす』は、これらの課題に取り組むための大きなヒントを与えてくれます。
この記事では、その著作から選んだ15の交渉法則を紹介し、それぞれの法則がどのようにビジネスで活用できるかを英語の例文を交えて解説。
この記事を読んでいただければ、自身のコミュニケーションスキルを向上させ、ビジネスでもより効果的な交渉ができるようになります。
カーネギーと著作について
カーネギーについて
デール・カーネギーは、1888年に生まれたアメリカの作家であり、自己啓発と人間関係の改善に関する専門家です。
彼は、人々が自信を持ち、人間関係を向上させ、成功への道を切り拓くための方法を提唱しました。
カーネギーの最も有名な著作である『人を動かす』(原題: How to Win Friends and Influence People)は、1936年にリリース。
名著「人を動かす」について
『人を動かす』は、大恐慌時代という経済的にも社会的にも困難な時代背景の中で発表されました。
この時代には、多くの人々が仕事を失い、新たなチャンスを求めていた大きな転換の節目。
カーネギーのこの著作は、人々が自己改善を通じて困難な状況を乗り越え、より良い人生を築くための具体的なアドバイスを提供しました。
本書は、人間関係を改善し、他人とのコミュニケーションを効果的に行い、影響力を高めるための実践的なテクニックを提供しています。
カーネギーは、人々がお互いに対して持つ自然な感情や動機を理解し、それに基づいて行動することの重要性を強調しています。
『人を動かす』は、出版から数十年が経過した現在でも、ビジネスマン、リーダー、そして日常生活で人間関係の改善を求める人々にとって有益な指南書として広く読まれ続けています。
それでは次章から、「人を動かす」から厳選した15の法則を見ていきましょう。
原書で書かれている法則の順番を、本ブログでは説明しやすいように変えています。
もし本書にご興味がありましたら是非原文を確認してみてください。
また木村和美さんが書かれている「カーネギー「人の動かし方」」という素晴らしい本があります。英語もカーネギーの思想もどちらも学べるのでこちらも是非お読みになってください。
本記事もたくさんのヒントを頂いています。
『人を動かす』から交渉に使える法則15個
この後15個の法則について解説します。
すぐに使える法則については英語例文も併記しました。
気に入ったものはご自身のフレーズの1つに組み入れてご活用いただければ幸いです。
1.重要感を持たせる
人は自分が重要であると感じたとき、より積極的に協力し、ポジティブに反応します。
例えば、あなたがチームメンバーにプロジェクトの一部を任せる際、「このプロジェクトの成功はあなたの貢献にかかっている」と伝えることで、その人は重要な役割を果たしていると感じ、より一生懸命働く事が出来ます。
この「重要感」はこの書籍の中でも多く取り上げられており、カーネギーの中でも非常に重要な考え方であることがわかります。
「人を動かす」上ではこの法則は根幹にあたり、一番重要と言えるでしょう。
人は誰しも認められたいという欲求を心の奥底では持っていて、それを満たしてくれる相手には心を開いたり信用する傾向があります。
人は自分が重要だと常に確認したいんです。
ビジネス上の交渉でもこの欲求にうまく対応する事が必要になります。
重要感を持たせる英語例文
“Your work on this project has been outstanding. How did you come up with such a creative solution?”
このプロジェクトでのあなたの仕事は素晴らしかったです。どうやって創造的な解決策を思いついたのですか?
“I’ve noticed your skills in finance, and I’m impressed. Can you share how you developed these abilities?”
ファイナンスでのあなたのスキルを知ることができ、感心しました。どのようにしてこれらの能力を身につけたのか教えていただけますか?
2.心から褒める
真心からの褒め言葉は、相手の自尊心を高め、前向きな行動を促します。
これも相手に「重要感」を持たせる1種の方法と言えます。
例えば、部下がプロジェクトを成功に導いたとき、「あなたのおかげでプロジェクトが成功した。
あなたの努力と才能にはいつも感心させられる」と伝えることで、その人は認められたと感じ、今後もモチベーション高く働くことができます。
心から褒めるときは、具体的で誠実なフィードバックを心がけることが重要です。
心から褒める英語例文
“The way you handled that difficult situation was admirable. Your problem-solving skills are top-notch!”
あなたがその難しい状況にどう対処したか、賞賛に値します。あなたの問題解決スキルは一流です!
“You did an incredible job on this report. The attention to detail is impressive!”
このレポートは素晴らしかった。細部への配慮が印象的です!
3.顔をつぶさない
他人の尊厳を保つことは、いかなる関係でも基本的な礼儀です。
例えば、部下がミスをした際に公の場で叱責するのではなく、プライベートな環境で建設的なフィードバックを提供することで、その人の尊厳を守りつつ改善を促すことができます。
このアプローチで、尊敬と信頼の土台の上に関係を築くことができます。
100%自分が正しくて相手が間違っているという状況でも決して顔をつぶすのはNG。
批判するのではなく相手が努力してきたことを評価することで相手を傷つけずにやる気を継続してもらえます。
相手の顔をつぶさない英語例文
“You put so much effort into this, and it really shows. Remember, every experience, successful or not, is a step to improvement.”
あなたはこれに多大な努力を注ぎました、それははっきりとわかります。成功したかどうかにかかわらず、すべての経験は進歩につながります。」
“Even though it didn’t work out this time, the commitment and passion you showed are impressive. These qualities will lead to success in the future.”
今回はうまくいかなかったけれど、あなたが示したコミットメントと情熱は印象的です。これらの資質で将来的には成功するでしょう。」
4.聞き手に回る
効果的なコミュニケーションには、話すことだけでなく、相手の話を注意深く聞くことも含まれます。例えば、相手の話を途中で遮らずに最後まで聞き、その上で質問や意見を述べることで、相手は自分の話が尊重されていると感じます。
聞き上手は会話上手。
聞き上手に徹すると相手に重要感を持ってもらえます。
聞き手に回る英語例文
“That sounds interesting. Can you tell me more about it?”
それは興味深いですね。もっと詳しく教えていただけますか?
“What was your experience like? I’m genuinely curious to know more.”
その経験はどのようなものでしたか?非常に興味深いのでもっと知りたいです。
“I find your perspective very unique. What led you to see things that way?”
あなたの視点はとてもユニークだと思います。どのような経緯でそういう見方になったのですか?
5.関心のありかをみぬく
相手の興味や関心を理解することで、より有効なコミュニケーションが可能になります。例えば、相手がスポーツに興味があることを知っていれば、その話題で会話を始めることで親密さを増し、交渉をスムーズに進めることができます。
関心のありかを見抜く英語例文
“I noticed you were reading a book on fishing. What do you find most fascinating about it?”
釣りについての本を読んでいるのを見かけましたが、その中で最も魅力的だと感じるのはどの部分ですか?
“You seem really passionate about cooking. How did you get started with that?”
料理について本当に情熱を持っているようですね。それはどのように始めたのですか?」
6.期待をかける
人は期待されるとそれに応えようとする傾向があります。
例えば、マネージャーが部下に「君ならできる、私は君の能力を信じている」と伝えたら、部下は自己効力感を高め、期待に応えようと努力しますよね。
この方法は、ポジティブなフィードバックループを生み出し、人々を文のハードルを超えるレベルへと導きます。
相手に期待をし、それを伝えることで良い結果が得られるのです。
期待をかける英語例文
“I have every confidence in your ability to handle this project. You have the skills and insight needed to succeed.”
このプロジェクトであなたの能力を全面的に信頼しています。成功に必要なスキルと洞察力を持っていると確信しています。
“I’m really looking forward to seeing the great results I know you can achieve with this task.”
このタスクであなたが達成できる素晴らしい結果を見るのが本当に楽しみです。
7.激励する
期待をする、にも似ていますがこちらは相手を励ます、といった意味合いです。
人は励ましを受けることで、困難な状況でも前進する勇気を見出します。
例えば、チームが困難なプロジェクトに直面しているときに、「私たちは一緒に乗り越えられる。これまでのすべての挑戦を乗り越えてきたように」と励ますことで、チームメンバーは再び力を合わせて取り組む意欲を高められます。
激励は、人々の内面の力を引き出し、困難に立ち向かうエネルギーを与えてくれます。
激励する例文
“I believe in your ability to succeed. Your potential is limitless, and I can’t wait to see what you achieve next.”
私はあなたの成功する能力を信じています。あなたの可能性は無限大で、次に何を成し遂げるのか楽しみにしています。
8.対抗意識を刺激する
適度な競争心を刺激することは、人をモチベートし、目標達成へと駆り立てます。
例えば、営業チームに対して「今月はどのチームも素晴らしい成果を上げていますが、あなたたちのチームがトップに立つチャンスがまだあります」等伝えることで、チームは他のチームを上回ろうというモチベーションを得られますよね。
この戦略は、人々の内なる競争心を呼び覚まし、彼らを前進させる原動力となります。
対抗意識を刺激する英語例文
“Did you see the results from our competitors? It’s a great opportunity for us to push our limits and excel.”
競合他社の結果を見ましたか?これは私たちが限界を突破し優れた成果を出す絶好の機会です。
“Our main competitor just launched a new product. It’s innovative, but I know we can do even better. Let’s brainstorm and come up with something groundbreaking.”
競合他社が新製品を発売しました。革新的です。でも私たちはもっと良いものを作れます。アイデアを出し合って、画期的なものを作り出しましょう。」
9.イエスと答えられる問題を選ぶ
交渉や会話の中で肯定的な流れを作り出すことは、合意に至りやすくなります。
例えば、顧客にサービスを提案する際、直接「このサービスを購入しますか?」と聞くのではなく、「このサービスで問題を解決できると思いますか?」といったイエスと答えやすい質問を先に並べることで、肯定的なレスポンスを引き出しやすくなります。
イエスと答えられる問題を選ぶ英語例文
“Do you believe that a more collaborative team environment would lead to greater innovation?”
より協力的なチーム環境がより大きな革新につながると信じますか?
“Do you think that focusing on employee well-being will contribute to higher productivity in the workplace?”
従業員の幸せに注力することで、職場での生産性が向上すると思いますか?
10.思いつかせる
人は自分のアイデアに対して強いコミットメントを持ちます。
相手にアイデアを「思いつかせる」ことで、そのアイデアに対する所有感と責任感を高めることができるんです。
たとえば、チームメンバーに新しいアプローチを考えさせたい場合、「私たちはどうすれば効率を上げられると思いますか?」と問いかけることで、彼ら自身の解決策を出させ、より積極的に取り組ませることができます。
思いつかせる英語例文
“What do you think would be the best approach to solve this issue?”
この問題を解決するための最良のアプローチは何だと思いますか?
“How would you tackle this challenge if you had all the resources you needed?”
必要なすべてのリソースがあったとしたら、どのようにこの課題に取り組みますか?
11.誤りをみとめる
自分の誤りを認めることは、謙虚さを示し、相手との信頼関係を築く基礎となります。例えば、ミーティングで誤った情報を共有してしまった場合、「私の提供した情報に誤りがあったことを認め、お詫びします」と正直に伝えることで、信頼性を保ちながら関係を修復できます。誤りを認める際には、責任をとる姿勢と改善への意欲を示すことが大切です。
誤りをみとめる英語例文
“I’ve realized that I made a mistake in the report. I apologize for the oversight. I’m now working on correcting it.”
レポートで間違いを犯したことに気づきました。その見落とした事についてお詫びします。今それを訂正する作業を行っているところです。
“In hindsight, I can see that my comments were not considerate. I’m sorry for any upset they caused, and I’ll be more mindful in the future.”
振り返ってみると、私のコメントが思いやりに欠けていたことがわかります。それによって不快な思いをさせて申し訳ありません。これから一層気を付けるようにいたします。
12.自分の過去の失敗を話す
信頼を築く上で、自分の過去の失敗を率直に話す事は極めて重要です。腹を割って過去を披歴するリーダーは格好いいですよね。
例えば、リーダーが過去のプロジェクトでのミスをチームメンバーに共有し、「私のこのミスから学んだことは…」と語ることで、リーダーは誠実さを示し、チームの信頼を獲得します。
この行動は、完璧でなくとも誠実であることの価値を示し、他の人にも自分の失敗から学ぶ勇気を与えます。
自分の過去の失敗を話す英語例文
“There was a time when I made a decision without all the necessary information, and it didn’t end well. It’s crucial to gather all the facts before making a choice.”
必要な情報をすべて揃えずに決定を下したことがあり、その結果は良くありませんでした。選択をする前にすべての事実を集めることが重要です。
“I once overlooked an important detail in a project, leading to a significant setback. It was a tough lesson, but it emphasized the importance of attention to detail.”
プロジェクトで重要な事を見落とし、大きな後退につながりました。厳しい教訓でしたが、細部へ注意することに気付かせてくれました。
13.演出を考える
コミュニケーションは内容だけでなく、その伝え方にも影響されます。
例えば、重要なプレゼンテーションでは、ただ事実を述べるだけでなく、聞き手の感情に訴えかけるストーリーやビジュアルを用いることで、メッセージの印象を強く残すことができますよね。
このように、メッセージを伝える際には、その「演出」も計画的に考えることが効果的です。
特に日本人よりも欧米人の方が演出がうまいので、映画などをみてこの部分は学べます。
14.笑顔を忘れない
笑顔は、人との距離を縮め、信頼感を築く強力なツールです。たとえば、新しいクライアントに会ったとき、最初から笑顔で接することで、相手はあなたに好印象を持ち、コミュニケーションがスムーズになります。
カーネギーは高価な服を身に着けるよりも笑顔でいる方が何倍も重要だと話しています。
15.名前を覚える
人の名前を覚えて適切に呼ぶことは、相手に尊敬と関心を示す行為です。例えば、会議で意見を求める際に、「田中さん、あなたの考えを聞かせてください」と直接名前を使うことで、田中さんは自分が大切にされていると感じ、積極的に参加する可能性が高まります。
おわりに
これらの法則を日々のビジネスコミュニケーションに取り入れることで、あなたの交渉や説得などの結果は大きく変わるはずです。本書『人を動かす』教えをビジネスに活かし、より良い結果を出すための一歩を踏み出しましょう。
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